木彫りの祈りと蛍光灯の夜、君の手の温度 / Chapter 14: 第14話:Lの告白と光の祝福
木彫りの祈りと蛍光灯の夜、君の手の温度

木彫りの祈りと蛍光灯の夜、君の手の温度

著者: 稲葉 圭吾


Chapter 14: 第14話:Lの告白と光の祝福

番外編・神谷視点

両親が離婚したとき、養育費はどちらも高額だった。

でも、誰も私を欲しがらなかった。

二人が喧嘩する中、私はイヤホンをつけてソファで一人きりの配信ルームを見つけた。

入った瞬間、配信者が私のIDを呼んだ。「Lさん、いらっしゃい。なでなで」

驚いてすぐに退出した。

なぜ男の私に「なでなで」なんて言うんだ。気持ち悪い。母親だってそんなふうに甘やかしてくれなかった。

でも、指が勝手に動き、また配信ルームに戻ってしまった。

今度は何も言わず、カメラは木の板を映し、力強く彫刻刀を動かす手の血管が浮き上がっていた。無造作に刃を入れるだけで、波が完成した。

気づけば、丸一日見ていた。

「なでなでされたい」が配信を終えると、明らかに偽物の当選リンクが送られてきた。

でも、さっきの波の木彫りをくれると言われ、すぐにお金と住所を送った。

お金は受け取られず、管理人をやってくれと頼まれた。

【お願い、そんなに忙しくないから。欲しいものがあれば何でもあげるよ】

無報酬でいい。どうせファンも少ないし。

それから、暇さえあれば彼の配信を開いて、ホワイトノイズ代わりにした。

長く見ているうちに、彼の小さな癖も分かるようになった。

何かを彫り終えるたびに、その頭を撫でて、何かをつぶやく。

私は彼を「なでなで」と呼ぶのは、そのためだと彼は思っているが、実は名前に「なで」が入っているからではない。

本当に、バカだな。

バカで、可愛い。

カメラが映っていなくても気づかず、私はペンを止めてしばらく画面を見つめていた。

私も彼に頭を撫でてもらいたかった。

私は書斎を片付けて、彼からもらった木彫りを飾った。

ある日、発送先が自分たちの学校だと気づいた。

その夜、すぐに寮に入る手続きをした。寮で配信している人は多くないから、すぐに聞き出せると思った。

でも、こんなにうまくいくとは思わなかった。

悪いことをしている最中、隣の部屋から電話を切った声が聞こえた。

「なあ、大野の寮にいる配信の女々しいやつ知ってる?そうそう、腰が細いあいつ、相原っていうんだ。学校で一番ゲイだと思うよ。

木の板でごまかしてるけど、裏ではナンバーワンと何人も寝てるんじゃないか。こんな学校、最悪だよ。

新入り、お前はあいつのこと知ってる?」

私は拳を振り上げて殴り、他の奴らが止めに入ったので、全員に一発ずつ食らわせた。

最後は親の弁護士をちらつかせて念書を書かせ、示談で一人ずつ数万円払わせて口を止めた。褒められるやり方じゃないのは分かってる。それでも、あの場ではそれしかなかった。

私は酒が弱く、二杯飲めば記憶が飛ぶ。

でも、相原が引っ越してきた日、私はやっぱり酒を二本持ってきた。

酔って気が大きくなり、バスルームで吐きまくったとき、突然見覚えのない光景が脳裏にフラッシュバックした。

俺?

どうしても彼にキスしたがってた?

言ったことまで、トレンド入りした内容と全く同じだった。

一瞬で正気に戻り、相原をバスルームに引っ張って確認した。

柔らかい。前にもきっとキスしたことがある。

あの二次創作小説で書かれていたのも、全部俺だった。

翌日、私は大赦を宣言し、以前通報した二次創作小説をすべてグループに流した。

削除していたものも、全部解禁した。ごめん、全部戻す、と一言添えて。

相原がログインして「いいね」したのを見て、彼もきっと好きなんだと分かった。

相原は明日の電車で帰省する。もう俺のものじゃない。

最後のハグも、俺が強く頼んだからしてくれた。

彼は「よいお年を」と言い、大晦日に電話で新年の挨拶をしてくれた。

一番好きなシャツに大きなご祝儀袋が入っていた。千円札の束。計算すると、ちょうど俺の一ヶ月分の生活費と同じ額だった。

パンパンの袋の中には、金縁のお守りも入っていた。

両親が離婚したとき、誰も俺を欲しがらなかった。

相原だけが、俺の健康と安全を願ってくれた。

駅前のスタッフから、ライトショーの時間確認の電話が来た。

相原は以前「家から見えるのは山ばかりで、唯一見えるのは駅前の時計台の明かりだけ」と言っていた。

なら、時計台でライトショーをやれば、きっと彼にも見えるはずだ。

光の祝福が、俺の想いを彼に届けてくれますように。

新年おめでとう、相原。

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