木彫りの祈りと蛍光灯の夜、君の手の温度 / Chapter 13: 第13話:年越しの光と遠距離の会いたい
木彫りの祈りと蛍光灯の夜、君の手の温度

木彫りの祈りと蛍光灯の夜、君の手の温度

著者: 稲葉 圭吾


Chapter 13: 第13話:年越しの光と遠距離の会いたい

私は肉まんをくわえ、彼の手を引いて外へ出た。

昨日は下品な言葉で夜中まで私を困らせたくせに、今日は黙り込んでいる。

私は彼の手を借りて水を飲み、「私は家に帰って祖父と年越しするから、元気出して」と言った。

私はずっと、神谷はクールな子犬タイプだと思っていた。まさか、隣の家の猫より甘えん坊だったとは。

神谷は何も言わず、駅で私を抱きしめてくれた。

ホームの風が冷たい。抱擁はそれを打ち消してくれる。

年末の注文が殺到し、家では料理と配信、そして神谷との電話しかしていなかった。

彼の両親は海外から帰国し、一緒に年越しをしてくれたが、あまり嬉しそうではなかった。

大晦日、おせちを詰め終えたところで、彼から電話がかかってきた。声はまだ沈んでいた。

私は隅に移動し、自慢げに言った。「神谷、君のために新年のプレゼントを用意したんだ。すごいでしょ?」

神谷は静かな場所に移動したらしく、だるそうに言った。

「宅配は全部止まってるのに、どうやって渡すの?相原、空手形を切るつもり?」

私は予想通りだと腰に手を当てて指示した。「普段シャツを入れてる袋、そばにある?」

電話の向こうから足音が聞こえた。私は続けた。「一番好きな紺色のシャツ、開けてみて?」

学校を離れる前、私はこっそり彼のためにお守りを彫った。

木はウォールナットで、何度も描いた符号を、初めて慎重に彫った。

符号、と自分では呼んでいたけれど、実際は護符の図柄だ。神社の御守りに似た祈りの形を、木に刻んだ。

亡くなった、会ったこともない父のために、何度もお守りを彫った。

初めて、愛する人のために彫るお守りだった。

電話の向こうはしばらく沈黙していた。私は待ちきれずに言った。

「どうしたの?袋を家に持ち帰らなかった?それとも見つからなかった?

じゃあ、学期が始まったらまた作るよ……」

神谷が突然言葉を遮った。「相原、会いたい」

外の風が強いせいか、私は鼻が真っ赤になった。

祖父が私がなかなか戻らないのを見て、カーテンをめくって聞いてきた。「恋人できたのか?なんで家に連れてこないんだ?」

祖父は私に何も要求しなかったが、もし私の恋人が男だと知っても、受け入れてくれるだろうか。

彼が家に戻る前に、私は思い切って聞いた。「おじいちゃん、もし男でも、一緒に年越しのご飯を食べていい?」

祖父は足を止め、しばらくして振り返った。「なんだ?男の子だってご飯食べるだろ?男の子だって食べなきゃ」

鼻がさらにツンとした。私は地面にしゃがみ込んで、神谷がまだ電話を切っていないことに気づいた。彼が突然聞いた。

「そっちから、駅前の時計台が見える?」

私は後ろを振り返ってうなずいたが、時計台の方角はずっと真っ暗だった。

針が十二時を指し、除夜の鐘が鳴り響く中、私は神谷に新年の挨拶をしようとした。

そのとき、駅前のカウントダウン点灯イベントで、商店街主催のイルミネーションが一斉に灯り、紙吹雪とドローンによるライトショーの光が空に舞った。

ライトショーの音と歓声が受話器越しに聞こえ、神谷はスマホ越しに「相原、新年おめでとう!」と言った。

イベントは後から知ったが、光は思ったよりも高く、遠くまで届いた。

私は街いっぱいの光を見上げ、つぶやいた。「神谷、新年おめでとう!」

夜空の明るさが、胸の中にも降りてきた。

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