Chapter 6: 第6話:二つの財布とでっち上げ犯人
百まで数えるのを何度も繰り返したころ、土門刑事が戻ってきた。
今回は険しい表情だった。「犯人が捕まった。」
私はドキリとした。「捕まった?」
「鏡シンという人物、知っているか?」
私は首を振った。「知らない。」
本当に知らなかった。
「そうか、知らないんだな。」
土門刑事は頭を抱えて眉間を揉み、上の許可で事情聴取室の録音・録画ランプをいったん消した。
「その鏡シンは繁華街で犯行に及び、相手を昏倒させたところで通行人に見つかった。彼の所持品から湊の財布が見つかり、取り調べで全て自白した。すべて自分がやった、これが四件目になるはずだった、と。」
「湊の財布?そんなはずない。」
「なぜ?君は見てもいないだろう。」
私は頭が痛くなった。「だって財布は私が持ってる。」
私は自ら警察署に残ることを申し出ていたため、手錠はかけられていなかった。ポケットから薄い黒い財布を取り出した。中には数枚のカードだけ。
「なぜ湊の財布が君のところに?」
私が財布を出したことで、疑いが深まったのは明らかだった。
「だって私は彼の一番の友人だから。」私は笑ってみせた。「とにかく私が持ってる。鏡シンのは偽物だ。」
「だが財布には湊の指紋が検出された。」
ますます頭が痛くなった。
「見せて。」
「規則違反だ。」
私は消えた赤いランプと、外のノック音を指差した。「土門刑事、あなたも規則違反は少なくないでしょ。もう同僚が担当交代を催促してるよ。」
カメラの録画が止まった直後、外でノック音がしたが、土門刑事は中に入るとすぐ、カチャリと内鍵をかけた。
「じゃあ見せてやる。」
写真の紺色の財布は、確かに湊のものだった。
だが――
「偽物だ、湊のじゃない。」
「偽物にどうして指紋が?湊は死んでいる。生前使っていたものでなければ。」
「いや、誰かが生前の指紋を他の場所から移したかもしれない。」
私は土門刑事を見つめた。「どこが一番指紋が残ると思う?その人はなぜそんなことをした?」
「誰のことを言っている?」
「犯人をでっち上げて事件を終わらせようと急いでいる人のことだ。ネットじゃこの事件が燃えてる。犯人が出ない限り、火は消えない。もっとデカい事実が出てきたらどうする?」
「星名、君は他に何を知っている?」
「私に聞くより鏡シンに聞いた方がいい。財布が誰から渡されたかを尋問すべきだ。財布を渡した人こそ、調べるべき相手だ。」
ノック音が鍵の回る音とともに止んだ。
土門刑事は連れ出され、廊下から担当交代の呼び出しと、上司からの注意が聞こえた。
私はまだ点いていない赤いランプを見ながら、財布から二枚の銀行カードを抜いてポケットに入れた。
予想通り、次の瞬間、土門刑事が戻ってきた。
「財布を渡せ、証拠として提出する。」
「はい。」私は素直に渡した。
赤いランプが再び点灯し、土門刑事は出て行った。










