Chapter 2: 第2話:796点と消えた指先
湊の遺体発見現場から遠く離れた北海道・大雪山系の山中で、またもバラバラ死体が発見された。
湊と同じ手口、ただし今回は「796」という数字の形に並べられていた。
796点。警察はすぐにその点数の人物を特定した。
DNA鑑定で被害者が判明し、前回湊の遺体にあった人差し指と一致した。
前回の経験から、法医学者は遺体の組織を重点的に調べた。
やはり、すぐに796の遺体から別の異常な組織が見つかった。
またも指の一部だった。
ただし今回は中指。
警察が証拠袋を私の前に置いたとき、私はしばらくそれを見つめ、人差し指と中指を伸ばしてみせた。「これ、ピースに見えませんか?」
土門刑事は表情が険しくなった。
「796の被害者も君の知り合いだ。彼が死ぬ前に最後に電話した相手は君だ。」
「電話なんて受けてないけど。」
「電話がかかってきたとき、君はここにいた。不在着信のままだった。」
私は肩をすくめた。「それが……私と何の関係が?」
「二件の殺人事件、どちらも君の知り合いが被害者だ。」
「なら、私をしっかり守ってください。もしかしたら、次のターゲットは私かもしれませんよ。」
「いっそ、行くあてもないし、ここにいさせてください。犯人が捕まるまでここにいれば、私が犯人だと疑われることもないし、安全でしょ?」
土門刑事は探るように私を見つめた。「星名怜、なぜ共通テストを受験していない?君の成績を調べたが、出願していない。」
「ビリで受けても意味ないでしょ?」私は皮肉っぽく言った。
「成績は良かったはずだ。一回目の模試では学年トップ10に入っていた。」
「二回目三回目はビリだったよ。」私は正直に答えた。
「なぜ急にビリになった?」
「理由なんてない。突然頭から知識が全部飛んでいった。」
「なぜ九条家に住んでいた?」
「家が火事で焼け落ちたんだ。」
一回目の模試のあとに起きた火事の光景が、また頭にぶり返す。
「それと何の関係が?君たちは親友だから、彼が家に泊めてくれた?」
「気分が悪い、少し休んでいい?」
向こうは黙ったまま。私は机に突っ伏し、床に落ちる涙の音と、ドアの開閉音だけを聞いていた。
警察は中指の身元を突き止めた。
だが、現地に向かったときには、もう誰もいなかった。
この数日間、受験殺人事件で人々が不安に駆られている中、自分の子供の指が見つかったと聞いて、家族は二人も気絶した。
家族は急いで連絡を取ろうとしたが、繋がらなかった。
旅行会社の団体ツアーに参加していて、北海道の大雪山系の九日間の旅、今は七日目だという。
旅行会社に確認したところ、二日目にグループと喧嘩して離脱したとわかった。
だが、旅行会社は「三人で行動しているので大丈夫」と言った。
大丈夫?
大雪山に行った人の中指が、千キロ離れたここに戻ってきているのに。










