Chapter 10: 第10話:贖罪と取引のチェーン
「間宮雫の死の経緯は?なぜ鳴海陽子と同じように九条家で死んだ?」
「君、湊、九条厳一郎はそれぞれどんな役割を?」
「間宮結衣と鳴海櫂人は今どこに?動画の送信IPをたどって現地に行ったが、もう二人ともいなかった。」
「まず鏡シンに会わせてほしい。」
鏡シンは私に会って戸惑っていた。
私が彼を知らないように、彼も私を知らなかった。
だが、私たちは同じ事件に巻き込まれていた。
彼は犯人。
本当に彼が犯人なのか?
逮捕されたときでさえ、彼の刃は振り下ろされず、被害者は昏睡状態だった。
「九条厳一郎は君に何を約束した?」
鏡シンは警戒した。「何のことだ、九条厳一郎なんて知らない。君は誰だ?」
「私は君がなろうとした本当の犯人かもね。」
鏡シンは完全に動揺した。「ありえない!犯人は僕だ!僕がやった!」
「嫉妬で殺した!妹が邪魔だから殺した!全部僕がやった!君は偽物だ!僕のふりをするな!」
そう言いながら椅子から立ち上がろうとした。まるで本当に反社会的な暴発を演じているようだった。
だが――
「本当に人を心底憎むなら、『妹』なんて何度も口にしないよ。鏡シン、もうやめろ。九条厳一郎が何を約束したとしても、そんな価値はない。あいつは悪魔だ。」
「価値がない?悪魔にも救える時はある。」
「君が言っているのは妹さんの医療費だろう?私が出す。家に帰りなさい。」
鏡シンは信じられない様子だった。
「妹さんは君が自分を殺すなんて、全く信じていなかった。彼女は目覚めてからずっと警察署の外で待っている。君も妹さんの体調は分かっているだろう。彼女にずっと外で待たせたくないだろう?」
「悪魔と取引するなら、妹さんの意志も聞くべきだ。」
「そうじゃなきゃ、君の“救い”は救いにならない。妹さんは一生、檻みたいな場所に閉じ込められる。」
私は銀行カードを鏡シンに渡した。
「暗証番号は下6桁。病院の会計に直接払って。今日中に支払える分は用意する。振込でも書留でもいい。急ぎの支払いだから、君たちが安心できる方法で使って。」
「妹さんと家に帰りなさい。」
鏡シンは自白したが、捜査妨害で数日間留置された。
実は私は少し焦っていた。
何しろカードは私のものではない。
鏡シンには早く混乱に乗じて医療費を支払ってもらわないと。
どれだけ支払えるかは運次第だ。
幸い、土門刑事は鏡シンが自白した後、妹の鏡ユリを呼び、鏡シンが彼女に銀行カードを渡したと聞き、私は少し安心した。
「鏡シンは賢い子だ。」
「土門刑事もいい人だ。」
もし土門刑事が鏡シンの妹の病気のことを教えてくれなければ、私は九条厳一郎が鏡シンに何を約束したか気づけなかっただろう。
お世辞はいつの時代も有効だが、土門刑事にはあまり効かないようだ。










