Chapter 1: 第1話:825点のバラバラ死体
大学入学共通テストの結果が発表されたその日、私の一番の親友が死んだ。
遺体が発見されたとき、バラバラにされた体の一部が「825」という数字の形に並べられていた。
825点、神奈川県トップの成績。
警察は私を犯人と疑った。事件の数日前からずっと彼と一緒にいたし、遺体の手のひらには私の髪の毛がしっかりと握られていたからだ。
しかし、警察が私を取り調べている最中に、第二の殺人事件が起きた。今度は「796」……
『発表は一時保留』と出ても、九条湊は眉ひとつ動かさなかった。
全国模試で上位に入らなきゃ、数字は盾にならない。
もし私がその立場なら、父は飛び跳ねて喜んで、月でも星でも取りに行く勢いだ。
九条湊は画面をちらっと見て、すぐ消した。
九条家の両親も同様に淡々としていた。
その後数日、電話が鳴りやまなかったが、対応に呼ばれたのは忙しい住み込みのお手伝いさんだけだった。
九条湊は毎日私と一緒にいた。沈黙の中、ゲームをするか、私と遊ぶかのどちらかだった。
成績が発表されるまで、湊は私のそばを離れなかった。
その夜、彼は外出し――自分の足ではもう戻ってこなかった。
再び彼に会ったのは、「825」となった彼自身だった。
警察によれば、バラバラにされる前、湊の全身の骨はすべて叩き折られていた。法医学の鑑定では、生きている間にやられた可能性が高いという。
湊の手のひらに握られていた髪の毛のせいで、私は第一容疑者となった。
九条家の両親は出張中で、お手伝いさんも昼間しかいない。その日お手伝いさんが帰る前に見た湊の最後の姿は、私と一緒だった。
夜に外出した湊を知っているのは私だけ。彼が出たあとの私は、ずっと一人だった。
誰も私のアリバイを証明できない。
Nシステム(自動車ナンバー自動読取)の通行記録には該当車両が映っていなかった。警察は高級マンションの敷地内やエレベーターの防犯カメラ映像も確認したが、ある時間帯から録画が途切れていた。
今、警察は真っ暗な監視映像を見つめ、私への疑いをますます強めている。
なぜなら、防犯カメラのモニターの電源を切る直前、手を伸ばしたのは私だったからだ。
どう言い訳すればいい?湊に頼まれて切ったのだと。
私は取調室で何も言えなかった。言う気もなかった。
湊は死んだ。
私の一番の友人、九条湊が死んだ。
私は、嬉しいはずだと思った。喉がからからで、グラスの泡の音まで頭に浮かぶ。けどここじゃ栓も開けられない。シャンパンのタイミング、完全に外したのが惜しい。
警察は高級マンションの入口の監視カメラから、私が外に出る姿を見つけられなかった。湊だけが映っていた。髪の毛の説明はつかないが、疑いは一時的に軽くなった。
「湊が事件前に何かおかしな様子はなかったか?どんなことでもいい、人でも事でも。よく考えてくれ。協力してくれれば、早く犯人が見つかって、完全に疑いが晴れる。」
私は黙っていた。
警察は私が考えていると思っているようだった。
だが実際は、晩ご飯に何を食べようか、警察署のご飯は美味しいのかどうか、そんなことを考えていた。
結局、警察は私から有効な情報を得られなかった。知らないことは知らない、それだけで、いつも通りの日々だったとまとめられた。
だがすぐに、別のところから手がかりが得られた。
法医学者が現場の遺体をつなぎ合わせて、異常を発見した。
それは半分だけの人差し指で、他の組織とは違い、皮膚が強いアルカリで腐食され、骨まで露出していた。
さらに重要なのは、法医学の鑑定で、それが湊のものではないと判明したことだ。
警察はこの指の持ち主を必死に探した。
だが、結果が出る前に、指の持ち主が自ら現れた。










