夜景に沈む二人、計算された別れと静かな後悔 / 第8話: 親友の暴露と、妻の裏切りの写真
夜景に沈む二人、計算された別れと静かな後悔

夜景に沈む二人、計算された別れと静かな後悔

著者: 寺田 光


第8話: 親友の暴露と、妻の裏切りの写真

「早見優花、良心はあるの?全部私のせいにする気?」「私はLINEグループで一言言っただけ。あなたがしつこく頼んで、情報を集めてくれって言ったのよ」「私は助言しただけ。最終的に決めたのはあなたでしょ?」「当初は感謝してたくせに、今度は私を責めるの?何それ!」近藤は自分の正当性を主張した。言葉は早いが、説得力は薄い。

「でも私が早見さんに聞こうとした時、あなたが止めたじゃない。彼は本当のことを言わないって」優花は言い返せず、涙を流した。涙は真実の代わりにはならない。

「私は分析しただけよ。本当に聞きたかったら、私が止められるわけないでしょ」「結局はあなたが貧乏が嫌だっただけで、私のせいじゃない」近藤は無関心を装った。装いは薄い。

「そんなことない!この数年、あなたは親友だって言って、私から散々ご馳走になったり、金を使わせたじゃない!」「今になって私から得られるものがなくなったら、責任逃れ?そんなの許さない!」

「何がご馳走よ?招待したのはあなたでしょ。私は無理やり誘ったことなんてない」「離婚したいのはあなたで、私に責任を押し付けないで」「そもそも、早見さんの金目当てで結婚したんでしょ?」「会員制クラブでホストと遊んでた時、自分が既婚者だって思い出した?」「外で若い男たちと遊び回ってたくせに、今さら早見さんへの愛情を装うなんて、白々しいにもほどがあるわ」

金の話になると、近藤も本性を現し、優花の秘密を暴露し始めた。言葉の蓋が、あっさり外れる。

近藤が小さな得をするのが好きなのは、結婚前から知っていた。食事や買い物、遊びに行くとき、必ずと言っていいほど近藤のスマホは電池切れか未払いだった。私は優花に、いつもおごるのはやめた方がいいと助言したことがある。だが優花は聞く耳を持たず、近藤のために高級化粧品を買ってあげたこともあった。その時以来、私は口を出さなくなった。黙ることが、正しいと思っていた。

だが、まさか優花が私に隠れて浮気していたとは。胸の奥が、冷たい刃で裂かれた。

私の稼いだ金を、他の男のために使っていたのだ。言葉が出ないほど、吐き気がした。

完全に裏切られた気分だった。世界の色が、一瞬薄れた。

「でたらめ言わないで!」優花は私の青ざめた顔に気付き、近藤の口を塞ごうとした。だが近藤は優花を突き飛ばした。動きは速いが、心は遅い。

「何が貞淑な女よ。あのホストたちと撮った写真、まだ持ってるけど、見せようか?」近藤はスマホを取り出した。指が画面を滑る音が、妙に生々しい。

「自分だってろくなもんじゃないくせに!2年で3回離婚して、病気になった時は私が金を出したのに、よくも私を責められるわね!」優花は近藤のスマホを叩き落とし、髪を掴んで罵った。言葉より先に、手が動いた。

2人の女は、まるで路上の喧嘩のように、髪を引っ張り合いながら罵り合った。バン。高層の静けさが、瞬時に崩れた。きしむ。髪が裂ける音。

私は怒りで家のドアを開け、2人に叫んだ。「ケンカするなら外でやれ!」声が廊下に響いた。

「あなた、私がいじめられてるのよ!」優花は髪をボサボサにし、顔に傷をつけて泣きついてきた。泣き声は、私に届かない。

「分からないのか?ケンカしたいなら出て行け。ここで目障りなことはするな」私は2人を睨みつけ、苛立ちを隠さなかった。家は避難所ではなく、戦場になっていた。

近藤はその隙にバッグを拾い、そそくさと逃げ出した。逃げ足だけは速い。

優花はその場に立ち尽くし、涙を流した。涙の海に、立ち尽くすだけ。

彼女がわざと可哀想なふりをして、私が優しく慰めるのを待っているのは分かっていた。以前なら、すぐに駆け寄って慰めていたはずだ。だが今日は――。心が、もう動かない。

私は、女の涙が本当に海のように多いのか、見てみたかった。意地の悪い興味が、一瞬頭をよぎる。

何本もタバコを吸い終えると、優花はようやく観念したのか、家のドアを閉め、私の前にお茶を差し出した。湯気が静かに立ち上った。

そして、リビングの乱れた物を片付け、元通りにした。手際は相変わらず良かった。

「あなた……」片付けを終えた優花は、私が黙ってタバコを吸っているのを見て、甘えた声で隣に座った。声色だけが昔に戻る。

付き合っていた頃、私はこの態度に弱かった。優花が甘えると、何でも叶えてやった。だが今は、もう効果がなかった。心の扉は、固く閉じたままだ。

「用があるなら言え。馴れ馴れしくするな」私は嫌悪感を隠さず、少し距離を取った。距離は数十センチでも、心では果てしない。

「あなた、私が悪かった。今は2人きりだし、どんな罰でも受けるわ」優花はすぐに立ち上がり、うつむいて小学生のように言った。声は細く、言葉は軽い。

普段なら情趣と受け取れるが、今はただただ嫌悪感しかなかった。演技に見えるからだ。

特に近藤の言葉を思い出すと、ますます不快感が募った。胸の奥が、ざらついている。

「じゃあ、出て行けと言ったら出て行くのか?」私は冷笑し、優花を見上げて聞いた。笑いは冷たい。

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