第8話:救いの腕と冷たい規律
頬が熱くなった頃、私はスマホを手にした。
「先輩……」口を開くと、声がかすれていた。
「如月?」先輩の声が清流のように心に響いた。
「そっちはどうしてそんなに騒がしいの?」先輩は少し間を置いて聞いた。「どこにいる?」
「先輩、気分が悪い……」私は言った。「みんなに無理やり酒を飲まされた……」
「どこにいる?」
私は入り口の人混みを見て言った。「ロングナイトにいる。」
橘遼が席に戻り、申し訳なさそうに言った。
「如月、うちの従弟は昔から性格が悪くて、迷惑をかけて申し訳ない。
如月……顔がすごく赤いぞ?何を飲んだ?
今すぐ橘圭をぶっ殺してやる……」
私は橘遼を引き止めた。
「頼みがある。」私はグラスを彼に渡した。「もっと飲ませてくれ。」
橘遼は呆然とし、絶望的に言った。「お前、頭どうかしてるのか?橘家は一生お前に世話になるぞ!」
次の瞬間、バーのドアが開いた。
私は後悔し始めた。
天宮先輩はすぐに現れた。まだ帝都防衛アカデミー飛鸞団の戦闘服のままだった。
真っ白な制服のボタンはきっちり留められ、場の空気にそぐわない。それでも彼が入ってきた瞬間、騒がしいダンスフロアは一気に静まった。
彼の視線は冷たい風のように私を貫いた。
天宮先輩は真っ直ぐ私のもとへ来た。
橘遼はぶつかってよろめいたが、天宮先輩が私を抱き起こすのを見て何も言えなかった。
天宮先輩は橘遼を一瞥し、冷たく言った。「君はアカデミーの学生か?」
橘遼は一瞬呆然とした。今日はアカデミーのエンブレムは何も身につけていない。
「実任務期間中や翌日に訓練がある日は、アルコールは禁止だって何度も通達されているはずだ。」天宮先輩は声を低くした。
橘遼は昔から私と一緒に無茶をしてきたが、規則で縛られるのが大嫌いだ。それでも今は直立不動でしかいられなかった。
私は天宮先輩の腕越しに彼を見つめていた。
「如月、気分はどう?」天宮先輩は私の顔を両手で包んで尋ねた。
「先輩、暑い……」
天宮先輩の手はひんやりしていて、私は思わず身を寄せた。
「今すぐ連れて帰る。」天宮先輩は私を肩に担ぎ、再び立ち上がった橘遼を押しのけて外に出た。










