君の手が頬に触れた夜、運命に抗う僕らの距離 / 第6話:ロングナイトで暴れる影
君の手が頬に触れた夜、運命に抗う僕らの距離

君の手が頬に触れた夜、運命に抗う僕らの距離

著者: 本田 陸


第6話:ロングナイトで暴れる影

「如月、今日はどうして僕らと遊びに来たんだ?」

橘遼がバーカウンターから戻ってきて私に言った。

私は彼らに言わなかった。天宮先輩が十数日も外勤で帰ってこないから、ここに来たのだと。

「最近オメガと寝たって聞いたぞ?」

橘遼は私と一緒に育ったので、遠慮がない。

私は彼を一瞥した。

みんな私の気分が沈んでいるのに気づいていた。

もちろん、橘圭だけは例外で、私の隣に座って延々と話し続けた。

「お前がいなくて寂しかったよ、最近は物騒だし、親も外出させてくれない。極東境界区のテロ組織は暴れまくってるし、陛下はずっと病気だし……」

「でさ、子供の頃から思ってたけど、あの第一皇子は変態だよな……最近は若い皇女が皇居から失踪したらしい!母さんがパーティに行った時、皇族の誰一人無傷じゃなかったって、どう思う?」

橘遼は彼の従弟橘圭に引きずられていった。

今日は橘圭の家のクラブ『ロングナイト』の開店初日だ。

そして先輩に会えない十一日目でもある。

私は酒を一口飲み、ソファに身を預けた。

ふと、視界の端に見覚えのある影が映った。

胸がざわついた。

顔を上げると、細身の人影が私のテーブルにゆっくり近づいてきた。

その白いシャツの上から顔を見ると、天宮先輩にどこか似ている。

半分くらい似ていれば、十分に美形だ。

彼は私の目線に気づき、好意の色を浮かべた。

私は微笑んだ。

彼は私の機嫌が和らいだのを見て、グラスを手に私の隣に座った。

「お坊ちゃま……」彼はグラスを私の唇に差し出した。

私は彼の手からグラスを受け取り、一気に飲み干し、彼の顔をじっと見つめた。

彼は喜び、手を私の太ももに伸ばした。

だが次の瞬間、彼は悲鳴を上げた。

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