第3話:役立たずの僕と英雄の腕
怒った顔はなおさら可愛すぎる。
彼は私を連れてアカデミーに戻った。
「ごめんなさい、先輩。」私は目を伏せて言った。「僕は役立たずで、父にも見捨てられたんだ。」
「君は入学以来ずっと成績はトップクラスで、二年目にはパワードスーツの操縦で共同作戦もこなした。」天宮先輩は言う。
「人の優秀さは家族とは無関係だ。父はクズで、僕を商品扱いしてきたが、だからといって自分をゴミだと思ったことはない。」
私は彼の黒い瞳を見上げた。
そこには無数の光がきらめき、初めて彼を見た時と同じだった。
心臓が破裂しそうだった。
私は天宮先輩を抱きしめた。
「僕には先輩しかいない。」
その夜、如月家の屋敷にて。
「これが如月のベッドに転がり込んだオメガか?」
父の書斎から出てきたばかりの私は、遠くから応接室で声がするのを聞いた。
応接室では、如月さゆりが涼しい顔で紅茶をすする音がした。
如月さゆりは私の継母だ。
私は先輩を応接室に残したまま、まさか彼女が優雅にお茶をしている場に居合わせるとは思わなかった。
「まあ、アカデミーの子はお行儀がいいと思っていたのに……若いって、時に大胆ね。」と、上品な口ぶりで、皮肉が混じる。
「天宮家は小さなご家庭でしょう?最近は極東境界区に投資して大変だったとか。無理はなさらないでね。」と、笑みの縁に棘を忍ばせる。
奥様方は言葉を選びつつ、湿った刃のような嫌味を重ねるが、渦中の天宮先輩は黙っていた。
私は胸が沈み、急いで応接室に入った。
如月さゆりは椅子に端正に腰掛け、黒い長毛猫はテーブルの脚元を静かに歩いていた。
天宮先輩は背筋を伸ばし、静かな顔をしていた。
だが、目の奥には隠しきれない屈辱の色があった。
私が入ってくると、奥様方は口を閉ざした。
如月さゆりは立ち上がって言った。「如月、たまには帰ってきたんだから、今夜は優と一緒に夕食を食べていきなさい。」










