第13話:宮庁への車椅子と皇女への嘆願
あのあと搬送され、幾度か意識が途切れた。消毒液の匂いと機械の音が続き、ようやく今、目が覚めたのだと理解する。
目覚めると、橘遼がベッド脇にいた。
「おい、目が覚めたか?もう焼け死んだかと思ったぞ!!!」
私は橘遼に押しつぶされそうになった。
「如月兄貴、マジで命知らずだな。蒼真皇女は君の傷を見て極東境界区を徹底的に叩く勢いだった。今じゃ連邦の息がかかった連中は一掃されてるだろ。」
「俺は死んでないのか?」私は喉を触った。そこは滑らかだった。
「縁起でもない!不幸中の幸いってやつだ!」
「天宮先輩は?どこにいる?!」私は興奮して言った。
橘遼は目をそらし、しどろもどろに言った。「今はたぶん宮庁にいる。」
私はすぐにベッドから降りた。
背中に激痛が走り、橘遼が悲鳴を上げた。
天宮先輩は「貴族を謀殺しようとした」として、紫苑帝国の蒼真皇女に事情説明を求められた。
蒼真皇女は激怒し、天宮先輩を宮庁拘置区に一時収監するよう命じた。
飛鸞団は集まったが、帝国近衛隊に宮庁の外で止められた。
橘遼が車椅子の私を押し、人々は道を開けた。
蒼真皇女は執務室のデスク越しに私を見て、涙を浮かべていた。
「蒼真皇女。」私は言った。「天宮先輩は極東境界区を平定した功労者です。どうかお許しください。」
「彼はあなたを傷つけた!」蒼真皇女は声を上げた。
「それは私が彼を辱めたからだ。」私は言った。「この国の功臣がこのような扱いを受けるべきではありません。罪深いのは私だけです。」
蒼真皇女は憤然と私を見た。
「蒼真皇女。」私は言った。「あなたは兄のようになりたくはないでしょう。帝国をより繁栄させたいと願うなら、今こそ賢明な決断を。一人の貴族としてお願いです――どうか、未来の君主として誇りある選択を。」
蒼真皇女は呆然とした。
私は手を差し出した。
蒼真皇女は唇を噛みしめ、許可証を私に手渡した。










