君の手が頬に触れた夜、運命に抗う僕らの距離 / 第11話:政略結婚と坊やの反抗
君の手が頬に触れた夜、運命に抗う僕らの距離

君の手が頬に触れた夜、運命に抗う僕らの距離

著者: 本田 陸


第11話:政略結婚と坊やの反抗

天宮先輩と一緒に個室に入ると、すでに背の高い若い男が座っていた。

近づくと、彼からは明確なフェロモンの匂いがしない。ベータだろう。

私は少し安心した。

私は天宮先輩の左隣に座り、男と向かい合った。

「鏑木宗だ。」天宮先輩が私に紹介した。

その名前を聞いて私は目を上げた。

鏑木家の人?都内のパワードスーツ製造をほぼ独占しているあの鏑木家?

如月家は主に航空機産業で、私は以前に鏑木家の人と取引したことがあったが、彼には会ったことがなかった。

鏑木宗はグラスを掲げて私に挨拶した。

彼の目は値踏みするように、私を上から下まで見ていた。鏑木家の人間特有の視線だ。

だが、私は少し居心地が悪かった。

酒が進むうち、私はこの集まりの目的に気づいた。

私は呆然と天宮先輩を見つめた。

彼はかなり酒を飲んでいたが、酔った様子もなく、目はしっかりしていたが、私の目は避けていた。

天宮先輩がトイレに立った。

個室には私と鏑木宗だけが残った。

「天宮の意図はわかってるはずだ。」鏑木宗は私を見て言った。「君たちの間に一度事故があったのは知ってる。僕が来たのも、どんな幸運な奴か見たかっただけさ。」

「同意するつもりはない。」私は冷たく言った。

「天宮は本当に君を大事にしてる。だからもう駄々をこねるな、坊や……これは名目だけだ。僕は君みたいなのは無理だし、結婚後は干渉しない。君も僕に構うな。」

「鏑木家と政略結婚なんてしない。」私は立ち上がり、低い声で言った。

「初対面でよくそんなに同意できたな。君の目的は?」

「僕の目的は、鏑木家の技術と供給網を守るため、如月家の航空事業と提携して外部からの圧力を避ける。そのための形式的な婚姻関係を作るだけさ。私生活には一切干渉しないし、天宮に借りを返すのも目的の一つだ。」鏑木宗も立ち上がった。

彼は私とほぼ同じ背丈で、数歳年上、余裕のある表情だった。

「でも本音を言えば、君みたいな坊やがもう天宮を煩わせないでほしいだけだ。

半月前、天宮は任務中に君の電話を受けて、勝手に組織を離脱した。

謹慎の通知が下りて、その十三日間はずっと動けなかった。解除されたその日に、すぐ僕に連絡してきたよ。悩んで迷って、ようやく決断したんだろうな。

もう駄々をこねるな、坊や。大人はみんな忙しいんだ。」

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