第1話:罠のベッドと運命の刻印
私はネオ東京の名家・如月家のアルファの一人息子だ。
罠にはめられて目を覚ますと、隣には四年間密かに想いを寄せていた天宮先輩が横たわっていた。
先輩はつい最近オメガに分化したばかりで、きっぱりとマーキングを消すと言い出し、責任を取らせようとはしない。
涙がにじみ、喉の奥が熱くなる。「先輩……僕を罠にはめた上で、罪悪感を一生背負えってことですか?」 声は情けないほど震えた。
先輩は本当に美しい。
繊細な目元に、少年らしい気迫が宿っている。
だが、ベータからオメガに変わったことで、どこかほのかな色気が加わっていた。
先輩自身はきっと気づいていない。
でも、先輩の変化は、僕には全部丸見えだ。
先輩が目を覚ました。
私はとっさに布団を引き寄せて、慌てて胸元を押さえた。目の縁が熱くなり、涙目になっていた。
「う……」天宮優は頭を押さえながら起き上がり、すぐに驚いたように言った。「如月……?」
「先輩、ぼ、僕、頭がめっちゃ痛いです……」私は眉を少しひそめた。
「何が起きたのかわかりません。昨夜、先輩のお父様に呼ばれて、飲み物を手渡されて……それから何も覚えていません。」
「……クソッ。」天宮先輩は動こうとして体を引きつらせ、呻きながら布団に伏せた。
私は慌てて彼を支え、後頸部のフェロモン腺に自分のマーキングの痕がくっきり残っているのを見て、また興奮してしまった。
やっぱり、先輩は綺麗だ。
眉をしかめながらも、瞳はきらきらと輝いている。
彼は賢く、すぐにすべてを理解したようだった。
昨日の――二十四歳の誕生日の夜。招待状、乾杯、あのグラス。
「昨夜のことは誤解だ。これはうちの事情だ。」天宮先輩は苦しそうに言葉を選んだ。
誤解?そんなはずない。
これは運命の契約だ。
「君の家に迷惑をかけたりはしない。」天宮先輩は何かを決意したように、私をまっすぐ見て言った。「すぐにマーキングを消しに行く。」
何を言ってるんだ……。
私はむしろ、君の家がうちに絡んでこないか心配していたくらいだ。
私は目を潤ませ、天宮先輩の言葉に驚いたふりをした。
「先輩……マーキングを除去したら、もう防衛アカデミーには戻れなくなりますよ。」私は低く告げた。
今では除去手術はかなり進歩しているが、完全なマーキングの場合、精神面への負担などの後遺症が残る。
天宮先輩は一瞬、顔色を固くした。
「それでも消す。君に不公平だから。」
他人の痛みは当事者にしか分からない。
私は目を伏せ、胸の奥が沈んだ。
「先輩はアカデミーでずっと僕の面倒を見てくれました。もうすぐ卒業して正式に帝都防衛隊に任官ですよね。」私は呆然としたまま言った。
「僕を罠にはめた上で、一生罪悪感を背負わせるつもりですか?」










