十年目の夜、捨てられた子猫のように
十年という歳月を共にした恋人が、ある夜に裏アカウントで自分への本音を吐露していたことを知った大和。湾岸マンションの夜景も、キャンドルディナーも、指輪も、全てが静かに崩れていく。年の差や社会的な壁を乗り越えようとした日々、幼い恋人・陸のわがままも、涙も、すべて抱きしめてきたはずだった。しかし、偽りの愛と、すれ違う孤独が積もり、二人は静かに別れを選ぶ。札幌の冬、東京の会議室、そして暗いビジネスパーティーのトイレ——再会のたびに残る痛みと、触れられない距離。最後に残ったのは、捨てられた子猫のような自分自身と、彼のいない朝の光だけだった。それでも、もう一度だけ彼を愛してもよかったのだろうか。