第5話: 俺にそっくりな男と残酷な真実
問題が起きてから、しおりはようやく俺を責めに来た。待ち構えていた言葉を、机の上に叩きつけるように。
彼女は俺のオフィスに乗り込み、机を激しく叩いた。木目が揺れ、ペン立てが倒れた。
「こんな簡単なことも処理できないの? 桐生! どうしてそんなに情けないの?!」窓の外の街の音が、突然遠くなった。
社員たちは首を伸ばして中を覗いていた。ガラスの向こうに、噂の続きを探す目が並ぶ。
鳴海昴は唇を吊り上げて笑い、ドアを閉めた。軽く、俺には重い仕草だった。
あの日は怒りでいっぱいで、彼の顔をよく見ていなかった。怒りは視界を狭める。
今になって気づく。彼は俺にそっくりだった。若い頃の俺に。写真に残る十八歳の顔の輪郭に、彼の影が重なる。
俺の目の前で、彼は彼女の手の甲を撫で、優しく慰めていた。ささやくように、穏やかに、俺の存在をなかったことにする手つきで。
「しおり、彼を責めないであげて。今は事故でおかしくなってるんだから。」もっともらしい同情は、残酷の別名だ。
俺は胸がずしりと重くなり、しおりに尋ねた。「つまり、君はずっと知っていたんだな?」言葉に混じる湿り気は、怒りと悲しみが入り混じっていた。
彼女は俺が記憶喪失だと知っていた。それでも、俺をまったく知らない十年後の世界に放り込んだ。
俺は何度も失敗し、皆に笑われ、侮辱された。会議室の光の下で、誇りが磨り減っていくのが分かった。
俺のプライドは、彼らに踏みじ…










