初雪の日から、白髪になるまで一緒にいよう――僕が“当て馬幼馴染”だった世界の果て

初雪の日から、白髪になるまで一緒にいよう――僕が“当て馬幼馴染”だった世界の果て

著者: 伊藤 さくら


第3話:残り半月の同居カウントダウン

この二日間、僕は体調を崩して家で休んでいた。頭痛が続き、喉の奥にいつも小さな棘が刺さっているみたいだった。

美羽は仕事が忙しいのに、休暇を取って家にいてくれた。彼女は昔からそうだった。誰かを大切にしたいと思ったら、その人を手のひらに乗せて守る。

その優しさは、拒むことができないほどだった。暖かい毛布のように、包まれると抜け出せない。

でも、その優しさもだんだん他の人に向けられるようになった。目線の先が、少しずつ僕の肩越しへ流れていく。

美羽は普段、性格は明るくて可愛いが、仕事に対してはとても厳しい。会議中はスマホを見ない主義だ。

でも今は、しょっちゅう気が散っている。たった三十分で、もう何度もスマホに手を伸ばしていた。口元には無意識の笑みまで浮かべている。

僕はその光景をぼんやりと見つめていた。どれくらいぶりだろう?

美羽がこんな心からの笑顔を見せるのは、いつ以来だろう。胸の中に苦さが広がる。嬉しいはずの笑みが、こんなにも痛い。

実は全部が全部、美羽のせいではない。新が現れてから、僕は性格が変わってしまった。彼女と何度も喧嘩した。

それでも今、彼女がこの家にいてくれるだけでもありがたいことだ。目の前の湯気や、重なる食器の音、その一つ一つに救われる。

僕は家の中をじっくり見渡した。箸のような小物から家電のような大きなものまで、全部僕と美羽が一緒に選んだものだった。

あの頃の僕たちは、未来の生活に夢を膨らませ、最大の情熱で愛の巣を飾っていた。クッションの色一つに悩んで笑って、夜更けまで語り合った。

でも、新が現れてからほんの数か月で、すべてが変わってしまった。変化は音もなく、でも確実に。

僕には分かる、美羽の心はもう僕にはない。だから自分から彼女を送り出した。「仕事に行ってきなよ、僕は大丈夫。」

彼女は複雑な目で僕を一瞥した。たぶん、まだ少しだけ僕のことを好きでいてくれているのだろう。視線の温度が、完全に冷たくはない。

残りの命はあと半月。僕の体は目に見えて弱っていく。階段を上がるだけで息が切れ、指先がよく震えた。

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