第6話:狂犬への嫉妬と決意
そして本体はすでに奥多摩の山麓に到着していた。目の前には巨大な宗教施設「霊山会」本部、深い森と霧、鳥や獣が集う結界内、まさに現世の楽園、聖地だった。
だが、もし裏の施設で死体の悪臭がすれば、この聖地も一角が台無しになるだろう。聖域の皮を被った腐臭ほど、始末が悪いものはない。
胸に黒い感情が芽生え、思わず冷笑した。
長年、特級執行官として礼儀を崩さず、笑顔で立ち回り、言葉も選んでやり過ごしてきたが、心は穏やかだった。
だが、あの猿渡が来てから、胸の内が塞がるようになった。
猿渡が本部に来たとき、私は好き勝手に振る舞う猿渡を見て、軽蔑し、ますます不満だった。
本部で好き勝手するこの男を許せなかったが、捕らえようとすると、どうしても手が出なかった。憎悪と羨望が、同じ刃を持っていたからだ。
ついに猿渡が問題を起こした。組織のパーティーでの騒動を聞き、武装して捕らえに行こうとしたが、結局普段着で様子を見に行っただけだった。
その一目で、私は自分が嫉妬していたことに気づいた。
猿渡がパーティーで酔っているとき、私は彼の酒瓶を受け取り、大口で飲んだ。その時、私は酔っていた。
母の死、絶望のときに見た組織の幹部たちの顔を思い出し、その瞬間、母を焼き殺したような絶望が自分の上にのしかかっているようで、朦朧としたまま本部を去り、地方支部で何年も過ごした。
一日が一年、再び目覚めたとき、会長の命で猿渡を捕らえるよう言われた。猿渡がパーティーで酔いから覚め、組織に逆らって現場に下り、組織は総力を挙げて捕らえようとしたが失敗した。
私はこの任務を受け、即座に応じた。「了解、すぐに行く!」
当時、私は猿渡の運命も尽きたと思った。私と同じように、どれほど抗ってもこの組織には勝てないと。
だから、私が戦うべきだった。
その戦いで、私は周囲を退け、全力を尽くして猿渡と互角に戦った。勝ち負けを求めず、猿渡の本領を示し、組織にその才を惜しませたかった。
だが、猿渡を本部に連れて行ったとき、会長は猿渡の排除を命じた。
その瞬間、私は胸が痛んだ。
まさか、あの男があそこまで運が強いとは!
大棍が天を衝いたとき、胸のつかえが一気に晴れた。
再び胸が塞がったのは、三年前の祝賀の翌週、猿渡が「洗脳」されて戻った日だった。
私は目の前の宗教施設を見つめ、今日こそ霊山会本部に入り、猿渡の精神が本当に消えたのか確かめるつもりだった。
まず凌雲橋に向かった。










