第5話:師匠、それはあなたじゃない
かつて白崎は本部の機密情報を焼き、会長に吊るされ厳罰を受け、間もなく抹殺されるところだった。
その後、大僧正の取り成しで死罪を免れ、地方支部に左遷され、葛城と出会うことになった。
あの制裁は無駄ではなかったのか、堂々たる幹部候補が野良同然の扱いを受けた。
西域遠征で、どれだけの犠牲が出たことか。白崎が生き延びたのも不思議ではない。
だからこそ、今も無事なのだろう。
遠征後、白崎は宗教結社の特別幹部に昇格し、本部の結界内で過ごしている。
私は、この得をした者が今どんな様子か見てみたかった。
分身が支部に降り立つと、支部長が部下を率いて出迎えた。私は分身の身分を偽装し、幻術で制服を複製して儀礼の出迎えに紛れ込んだ。私は頭を垂れ、白崎 烈を見つけられなかった。礼節は整っているが、支部長の目の奥が揺れていた。
「神代さんが西海にお越しとは、こちらからお迎えできず申し訳ありません。」
「気を使うな。」
支部長は身を低くし、まるで部下のような礼を取った。私は支部の中へ進み、今回の訪問で白崎には会えないと悟った。誰かが壁を作っている。
私は突然怒鳴った。「いい度胸だな、支部長。ふざけた真似をしてくれる。」
私は“悪客”の礼を取った。わざと場をひっくり返し、真意を吐かせるために。
場は騒然、支部長の顔は強張り、目には様々な光が宿る。
「神代さん、私が何の罪を? 分かりません!」
「まだ分からぬか!」私は支部の前に大股で進み、広場の寄贈者銘板を指さして怒鳴った。「河岸の町では、数年前からお前の名前が立派に刻まれ、地元の名士として祭り上げられている。一方で、毎年子どもたちが失踪している。守護役なら、警察や町会と連携して説明責任を果たすのが筋だろう!」
「それとも、裏で結託しているのか!」
支部長の顔色が変わり、慌てて言った。「神代さん、誤解です! あの事件は大僧正の管轄で、私などどうして……警察にも失踪届を出し、町会とも協議しています!」
私は冷笑して怒鳴った。「よくも大僧正を中傷したな。まさかトップがあの事件を放置しているとでも?」
支部長はさらに青ざめた。支部は本部から切り離されて久しく、実際、事件をもみ消す力などなかったのだ。
私は適度に口調を和らげ、尋ねた。「まさか、何か裏事情があるのか?」
支部長は目を光らせ、すぐに部下を下がらせ、深く会釈して言った。
「神代さんに何かご用があれば、何なりと。全力を尽くします!」
支部長は深々と頭を下げ、私は白崎が支部にいないことを確信した。
私は表情を変えずに言った。「……白崎は戻ってきたか?」
支部長は立ち上がり、首を振って目を曇らせた。
「遠征の後、家に戻らなかったのか?」
「神代さんに申し上げますが、戻ってきていません。本部から帰って以来、遠くから一度見かけただけです。」
「どこで?」
「凌雲橋です。」
私は眉をひそめた。そこは葛城が本部に入る前に通った場所だ。
「そこで何をしていた?」
「ただ、あそこで叫んでいるのを聞きました――」
「何と?」
支部長は恐怖の表情を浮かべた。「師匠、それはあなたじゃない!」
私は目を細めた。
支部を出てから、私は長く目を閉じ、荒唐無稽な考えが頭に浮かんだ。










