第4話:花果に現れた偽りの猿
――それから三年。
その日、相棒の火村 ナツが知らせをもたらした。猿渡が旧スラム街「花果」に宗教施設を建て、霊山会の信者を集めているという。
信者が参拝に集まった日、梅山の六怪は彼がスラムの野良猿を追い払うのを見た。
胸が突然痛み、何かが死んだ気がした。
私は霞が関を出て、花果へ向かった。
だが、そのとき奥多摩の山中から弱々しい豚の鳴き声が聞こえ、悲しく、弱々しく、英雄の晩年のようだった。
私は足を止め、火村に分身を花果へ向かわせ、自分は奥多摩の「霊山会」本部へと向かった。
私が去ると、霞が関の上層部の笑い声が再び響いた……政治の笑いは、いつだって冷たい。
私はまだ霊山会本部に着かぬうちに、分身と火村が花果に到着した。小猿がスラムの片隅に座り、宗教施設をぼんやり見つめ、寂しげだった。
私は驚かせぬよう火村を下がらせ、さらに小さな猿に化けて隣に座った。
「なぜ中に入らない?」と私は尋ねた。
小猿は私を見て、ゆっくりと手を挙げ、花果の宗教施設を指し、呟いた。
「家が乗っ取られた。俺たちはリーダーが戻るのを待ってる……戦いが始まるんだ。」
「中にいるのが君たちのリーダーじゃないのか?」私は不思議そうに言った。
「それは違うって、じいちゃんたちが言ってた。五年前、奴が街を奪った……」
小猿はぽつりと呟いた。「リーダーは戻ってくるよね? 五年前、じいちゃんたちは、リーダーが戻って街を取り戻したって……」
私はどう答えていいか分からず、さらに胸が苦しくなった。希望と嘘は、同じ顔で子どもの目を騙す。
天眼を開き、花果の宗教施設の中を覗いた。
猿渡は白い僧服をまとい、無表情で座していた。
私は彼を見たが、彼は応じない。
私は怒り、彼を罵った。「黙って座ってるだけで、立派な指導者気取りか!」
「だが猿渡、お前は死んだんだぞ!」
私は袖を翻して街を離れ、猿渡は結局目を開けなかった。最後に小猿に一言残した。
――リーダーは死んだ。中にいるのは操り人形だ。
私は花果を離れ、分身を西海の支部へ向かわせた。
西域遠征の四人は皆、何か問題を抱えている。もし今、事情を知る者がいるなら、彼らに忘れられた「小白龍」――白崎 烈だけが唯一の手掛かりかもしれない。










