第2話:離婚宣言と天宮くん
「本当に決めたの?」小雪はドラマを見終えた。
「うん。」
彼女は私の目を一瞥した。「好きな人でもできたの?」
「気にするの?」私は小雪に尋ねた。
小雪は笑った。「で、実際どうなの?」
ほら、小雪はいつもこうだ。
……まただ。
曖昧にさせて、私に希望を持たせる。希望は小さな餌のように投げられ、私はいつもそれを拾ってしまう。
「いないよ。」私は目を伏せ、冷たい指の隙間から声を漏らした。
「ただ、疲れたんだ。」
「分かった。」小雪はあっさりと答えた。まるで天気予報を聞き流すみたいに。
その夜、私は荷物をまとめて家を出た。玄関まで来ると、小雪が聞いてきた。「そんなに急ぐの?」台所のテーブルには緑色の離婚届が置かれていた。私は出る前に一人でそれに向き合い、震える手で署名欄に自分の名を書き、夜間窓口に提出する覚悟を確かめていた。
私はうなずき、それ以上何も言わなかった。お互いに気まずくなるようなことを言いたくなかったからだ。言葉はもう十分すぎるほど使い果たした気がした。
小雪は意味深な目で私を見つめた。
「ちょうどよかった、明日から天宮くんに引っ越してもらうから。」
あの男の名前だろうか。
天宮――いい名前だ。きっと明るくて爽やかな青年なのだろう。名前だけで、光の差す窓辺が思い浮かぶ。
私はまだ母にどう説明するか決めていなかった。小雪の家を出た後、しばらく友人の家に身を寄せた。
荷物を整理していると、小雪の家に忘れ物があることに気づき、急いで取りに戻った。
だが玄関に着いたとき、私は立ちすくんだ。まさか本当に天宮をすぐに呼び寄せるとは思っていなかった。
玄関には、手荷物だけを持った天宮がすでに来ていた。小雪は彼に「しばらく仮で滞在してもらうだけだから」と説明している。
天宮は清潔感があり、背の高い青年だった。私よりもさらに頭一つ高い。姿勢がよく、ドア枠を軽やかに越える動きに無駄がなかった。
小雪はかつて冗談めかして言ったことがある。「あなたと結婚してよかったわ。私、背が高いから、他の男性だったらきっと気にしてくれないもの。道を歩けば兄妹みたいに見えるし。」
なるほど、彼女が天宮を好きになるのも分かる。視線の高さが同じ相手に、彼女は安心を見出したのかもしれない。
二人は私の目の前で楽しそうにふざけ合い、笑い合っていた。そんな気遣いにあふれた小雪を、私は一度も見たことがなかった。笑い声は低く抑えられ、近所への迷惑を避けるように自然と節度があったのに、幸福だけは手の届かない場所で弾んでいた。
形だけの結婚をするとき、私たちは約束した。もし本当の愛に出会ったら、お互い自由にしようと。
小雪、あなたにあの光景を見せてもらえて、感謝すべきなのかもしれない。さもなければ、私は空気も読めずに居座り続けて、あなたに切り出させてしまったかもしれない。
私が現れると、二人は少し驚いたようだった。
「忘れ物を取りに来ただけだ。」私は言った。
小雪は何も答えなかった。
私は結婚指輪を外し、メゾネットの二階の寝室の机の上に置いた。金属音が静かな部屋に小さく響き、それが妙に終わりの合図に聞こえた。
小雪がドアを開けて入ってきた。「指輪まで外したの?」
「うん。」ほとんど一睡もしていなかったので、声が少しかすれていた。
「小雪、幸せになってくれ。」
なぜだろう、小雪の笑顔がどこか冷たく感じた。凍った湖面に映る月のような笑みだった。










