七度目の転生で、傲慢な令嬢は狂犬の首輪を締める

七度目の転生で、傲慢な令嬢は狂犬の首輪を締める

著者: 清水 朱音


第3話: 兄の転落死と母の影

蓮は答えず、親指で私の唇の水滴を拭った。指の腹がやわらかい。

「私は他にも知っている。ご主人様は復讐のために、正人を火の中に蹴り込んだ。」

「ご主人様は仕返しをするときが一番美しい。」

囁きが唇に触れ、蓮の目に欲望が浮かぶ。私はこれはまずいとすぐに突き放したが、この犬はまだ終わらない!

蓮は私の拳を掴み、手の甲にキスをした。

「ご主人様が私に殺意を抱くとき、私と一番似ている。」

「そして一番、胸を打たれる。」

息が止まりそうになった。

「蓮。」私は彼を見つめ、真剣に言った。

「一度、薬でも飲んで頭を治したほうがいいんじゃないか?」

残念ながら、蓮は頭を治す気はなかった。

この数日、彼は正人の死後処理に忙しく、昼は姿を見せず、夜だけ私の屋敷に現れた。影のように、決まって夜に現れる。

私は口では外で遊び歩く犬などと罵ったが、実際は放っておいた。

今、蓮は証拠を握り、もう少し時間があれば大きな動きを見せるだろう。空気の匂いが変わる予感がある。

「ユーザー!いい知らせだよ!男主人公の好感度が70になった!」

私はリクライニングチェアでくつろぎ、庭の桂の木の下で、最近ハマっている輸入菓子のピスタチオをつまんでいた。長らくサボっていたシステムが突然現れた。通知音がやけに楽しげだ。

70?

この数値は異常に高い。画面のバーが緑の最上段に差しかかっている。

「蓮、ついにこの日が来たな!」

私はにやりと笑い、足を組んだ。靴底を組み直す音が乾いた。

「何度も殺され、あんなに冷たくしてたくせに、結局は私に心を奪われたんだ!」つい男口調になっていたが、今は気にしない。

「ユーザー、その安っぽい笑顔……君も蓮に……」

「うるさい!」

私は即座に皿ごとピスタチオを掴み、殻をぽりぽり割って口に放り込んだ。かりかりという音が気分を落ち着ける。

やっぱりこうやって食べるのが一番だ。今夜は蓮に一晩中ピスタチオの殻を割らせてやろう。彼なら文句も言わず、嬉しそうにやるだろう。

「でもユーザー、注意して。好感度が100にならない限り、任務は失敗だし、君はまた蓮に殺されるよ。」

「死ぬなら死ぬさ、もう何度も死んでるし!いっそまた刺してやるか?」

「ユーザー!やめて!せっかく好感度70まで来たんだから、もうひと頑張りしてみては?例えば刺激を与えるとか、薬を盛るとか、縛るとか……」

「やめろやめろ!お前の下品な発想はやめろ!」

システムは本当に頼りにならない。私がその下劣な考えを正そうとしていると、突然一人の女が門から飛び込んできた。

彼女は黒い喪服姿で目を真っ赤にし、いきなり大声で怒鳴った。ヒールの音が石畳に鋭く響く。

「アゲハ!出てこい!」

「誰かと思えば、柳夫人じゃないか。せっかくの西園寺邸を離れて、何の用だ?」

私は椅子を揺らし、迎えに行く気もなく、内心では前世にこんな展開はなかったなと不思議に思った。香の匂いだけがやけに鮮やかだ。

「アゲハ、お前は兄が死んだのに喪に服さないとは!不孝で不義、畜生以下だ!」

「喪に服す?」

私は鼻で笑った。

柳夫人は鬼のような顔で飛びかかり、私と取っ組み合いになった。爪が肌に食い込む感触が嫌に生々しい。

柳氏は鬼のような顔で飛びかかり、私と取っ組み合いになった。爪が肌に食い込む感触が嫌に生々しい。

「お前だ!お前が正人を殺したから会いに行けないんだ!お前も母親と同じく下劣だ!」

私は彼女を地面に叩きつけ、護身用の小型ナイフを抜いて鎖骨に突き立てた。刃が骨に当たる鈍い感触が掌に残る。

柳夫人は悲鳴を上げ、血が白い喪服を染めた。赤と白のコントラストが目に刺さる。

「母の悪口をもう一度でも言えば、お前もあの世に送ってやる!」

「アゲハ……」

彼女は私を睨みつけ、突然狂ったように笑った。笑い声が空気を裂く。

柳夫人は唇を動かし、私はその口の動きをじっと見つめ、しばらく呆然とした。意味が、頭に遅れて降りてくる。

柳氏は唇を動かし、私はその口の動きをじっと見つめ、しばらく呆然とした。意味が、頭に遅れて降りてくる。

血まみれのナイフがカランと地面に落ちた。指先の力が抜けた。

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