ジャスミンの香りが消える夜、もう一度だけあなたを思い出す / Chapter 5: 第5話:大阪行きと電話越しの別れ宣言
ジャスミンの香りが消える夜、もう一度だけあなたを思い出す

ジャスミンの香りが消える夜、もう一度だけあなたを思い出す

著者: 秋山 みのり


Chapter 5: 第5話:大阪行きと電話越しの別れ宣言

あの夜以降、西園寺翔は私の世界から完全に姿を消した。

私は親友の家に数日間泊まった。

気持ちがなんとか落ち着いた後、

学校近くの自分の部屋に戻り、荷物をまとめた。

出発前にもう一度念入りに確認して、私物を一つも残していないことを確かめ、鍵をかけて出た。

私は浪速大学への国内提携留学を申請した。

うちの大学と浪速大学の提携プログラムは特例で二年制。定員も少ない。

一週間後には手続きに行かなければならなかった。

ある日、学校近くで西園寺翔の車を遠くから見かけた。

あの晩の美しい女性が彼と一緒に車から降りた。

二人は屋台でたこ焼きを買っていた。

ちょうど春の終わりの午後四時。

陽射しが木漏れ日となって降り注いでいた。

行き交う学生やカップルは、みな若さに満ちて輝いていた。

私は本を抱え、最も普通のトレーナーとジーンズ姿でクスノキの下に立っていた。

好きだった人が、こんなにも簡単に他の人を好きになるのを見て――

どうして、少しも悲しくないわけがない。

でも、春の日差しは心地よく、私はまだ若い。

負けたところで、何も失うものはない気がした。

大阪・浪速に来て半月余りが過ぎた頃、

西園寺翔から初めて電話がかかってきた。

ちょうど本を抱えて図書館を出たところだった。

耳元で西園寺翔の声がした瞬間、ものすごく遠い存在に感じた。

「美桜。」

「今、寮にいるの?それともどこか出かけてる?迎えに行ってもいい?」

私はしばらく黙ってから答えた。

「寮にはいないし、東京にもいない。」

「どこに行ったんだ、美桜?」

「交換留学を申請して、一週間前にもう出発した。」

「どうして言わなかったんだ、相談もせずに?」西園寺翔の声が急に大きくなる。

「翔、実はこの数日間、ずっとあなたの電話を待っていた。」

「今こうして電話が来たから、やっと言える。」

「美桜……」

西園寺翔は何か言いたげだった。

でも私は遮った。「付き合おうと言ったのはあなた。でも、別れるのは私が言わせて。」

「翔、私たち、別れましょう。」

「これからは、もう電話も連絡もしないで。」

「美桜……」

彼の言葉が終わる前に、私は電話を切った。

すぐにまた電話がかかってきたが、出なかった。

呼び出し音が止むと、彼の連絡先をすべて削除し、ブロックした。

胸がスカスカになったような感覚。けれど、肩の力が抜けて、思わず深く息を吐いた。涙は出なかった。

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