Chapter 4: 第4話:ジャスミンの残り香と傲慢な若様
――その頃、パーティー会場のバルコニーで、西園寺翔は。
酒が回り、西園寺翔は頭がぼんやりしてきたので、グラスを置いてバルコニーに出た。
タバコを取り出して火をつけたところへ、友人がやってきた。
「さっき、誰かが美桜を見かけたって。」
西園寺翔は指に挟んだタバコの動きを止めた。「いつの話?」
友人は西園寺翔を一瞥し、小声で言った。
「たぶん、みんなが君がどうして美桜を好きになったのか話してた時。」
西園寺翔は吸っていたタバコの味が急に変わったように感じた。
半分残ったタバコを灰皿で消す。
まくり上げた袖には、ほのかにジャスミンの文香の香りが残っていた。
西園寺の家のクローゼットには、いつも美桜が京都の老舗で買ってきたジャスミンの文香が忍ばせてあった。
どうしてだろう、酔ったときに美桜がいれてくれるお茶のことまで思い出してしまった。
彼女の好きなものは、どれも彼女自身に似ている。
少し淡白で、長く付き合うと飽きがくる。
でも、ふとした瞬間にまた心を惹きつける香りが残る。
「美桜、怒ってないかな?」友人が心配そうに尋ねる。
西園寺翔は自信ありげに答える。「怒らないさ。」
「たとえ怒っても、すぐに機嫌を直してくれるよ。」
「それで、お前の本心は?美桜がいいのか、それとも高嶺さんがいいのか?」
西園寺翔はまたタバコに火をつけた。
一本吸い終わると、眉を上げて友人に笑いかけた。「両方手に入れちゃいけないのか?」
友人は驚いた。「じゃあ、美桜と別れるつもりはないんだ?」
西園寺翔は友人を睨んだ。「なぜ別れる必要がある?」
美桜はあんなに従順で、手間もかからない。
今は彼女に少し飽きてきたとはいえ、別れるつもりはなかった。
ただ、今は彼女を慰める気分でもなかった。
どうせ美桜は自分で自分を慰めるだろう。










