Chapter 20: 第20話:婚約の夜、ジャスミンの誓い
その後の二年間、工藤仁は本当に約束を守った。
ただ、彼の周りには時々、絶世の美女が現れた。
彼は気性が激しく、やることも容赦ない。
下心のある女たちには手加減しない。
だが不思議なことに、何度も美人が押しかけてきた。
私ですら心を奪われそうなほどだった。
かつて西園寺翔を夢中にさせた高嶺レイナでさえ、彼女たちには敵わなかった。
だが工藤仁は、まるで目が見えないかのように無関心だった。
婚約前になって、私は西園寺翔の友人から真相を聞いた。
この二年、工藤仁の周りに現れた美女たちは、みんなが思っていたような“遊び相手”じゃなかったらしいと。
仕事の取引先だったり、勝手に寄ってきた相手だったりで、仁さんから本気で関係を持った女はいなかったらしい、とその友人は言った。
あれほど女慣れして見えるのに、実際は肝心なところで全部きっぱり断っていて、噂だけが一人歩きしていたのだという。
友人は最後に、「あいつがちゃんと向き合ったのは、美桜、お前だけだよ」と、少しあきれたように笑いながら、それでも優しい声でそう締めくくった。
工藤仁も不誠実だが、西園寺翔も自分を抑えきれなかったのだから、自業自得だ。
お互い様ということで、この二年、女のことで工藤仁も頭を抱えていた。
でも、いよいよ私と工藤仁は婚約する。
西園寺翔も静かになった。
婚約の夜、私はバスルームから出たところで、工藤仁にベッドに押し倒された。
ジャスミンの文香の香りが私たちを包み込んだ。
彼はそれ以上はせず、ただ私を強く抱きしめた。
顔を寄せ、指を絡め、私が息もできないほど抱きしめた後、やっと身を起こした。
バスローブの帯を解いた。
淡い光の中、私は顔をそむけて目を閉じた。
工藤仁のキスは下へと下り、やがて頂点で止まった。
彼の低い笑い声が聞こえた。「この二年、無駄じゃなかったな……」
「何言ってるの?」私は恥ずかしくて、彼を軽く蹴った。
彼は私の足首を握り、ゆっくりと持ち上げた。
熱いキスが雨のように体中に降り注いだ。
「美桜……君は大人になったな。」
「工藤さん!」
彼は私の口を塞ぎ、「恥知らず」と言いかけた私の言葉を飲み込ませた。
この二年で彼のキスはますます上達し、私はすぐに力が抜けてしまった。
枕元の文香から漂う香りが、春の夜にやさしく残り続ける。
だが、夜はまだ始まったばかりだ。










