Chapter 16: 第16話:二年越しの執着の裏側
彼は焦って手を出さず、彼女が笑うまでただ隣に座っていた。無理に奪おうとはせず、美桜が自分を好きになる日を、静かに待ち続けた。
彼が欲しかったのは、自然に心が通い合う関係だった。
美桜は彼の隣で眠りについた。
彼は眠れず、さっきの西園寺翔との殴り合いを思い出した。
西園寺翔が一番傷ついたのは、彼が美桜を抱いているところを見たことではなく、
自分の服に染み付いていたあのジャスミンの香りが、
かつては自分だけのものだったのに、今は他の男のものになったと気づいた時だった。
そして、西園寺翔は問い詰めた。「工藤さん、いつからなんだ?」
いつから彼女を狙い、自分のものにしたいと思っていたのか?
正確には、西園寺翔が初めて彼女をパーティーに連れてきた時からだった。
この仲間内は皆、幼い頃から様々な美女を見てきた。
彼自身も美女にはとっくに免疫ができていた。
だが、美桜を初めて見た時――
彼女が西園寺翔の隣でおとなしく立ち、「仁さん」と呼ぶ姿を見て、
思わず何度も彼女を見てしまった。
確かに彼女は美人ではなく、やや痩せすぎている。
ただの幼さが残る普通の女子学生だった。
だが、彼女の丸い瞳は猫のように純粋で可愛かった。
とても澄んでいて、心の底まで見通せるようだった。
彼女自身も、その愛情も、どこまでも純粋だった。
その純粋さに心を動かされた。
当時、西園寺翔は彼女をとても大切にしていた。
彼女が西園寺翔を見る目は、さらに心を打った。
その時から、工藤仁は分かっていた。
実は西園寺翔も、すでに気づいていたのだろう。
美桜の知られざる一面が、どれほど可愛いか。
そうでなければ、目の肥えた東京の若様が、どうして本当に平凡な女の子を好きになるのか。
工藤仁は微かな月明かりの下、眠る美桜を見下ろした。
想像していたよりも長い時間がかかった。
だが、ついに思いが叶った。
彼は西園寺翔が自分を恨んでいることを知っていた。
こんな手を使って美桜を奪ったことを。
でも、そんなことは気にしない。
気にするなら、彼女を好きになった時点で、










