ジャスミンの香りが消える夜、もう一度だけあなたを思い出す / Chapter 10: 第10話:客室と庭で交錯する思惑
ジャスミンの香りが消える夜、もう一度だけあなたを思い出す

ジャスミンの香りが消える夜、もう一度だけあなたを思い出す

著者: 秋山 みのり


Chapter 10: 第10話:客室と庭で交錯する思惑

車は工藤仁の広いマンションに着いた。

彼はスタッフに私を客室に案内させた。

「今夜よく考えて、明日答えを聞かせろ。」

「学校に戻れますか……」

「戻ってもいいが、何かあっても俺はもう助けない。」

彼はそう言い残し、さっさと去った。

私はしょんぼりとその場に立ち尽くし、やがて大人しくスタッフについて客室へ向かった。

工藤仁は庭でしばらく煙草を吸った。

美桜の姿が見えなくなるまで、じっと見ていた。

携帯が何度も鳴った。すべて西園寺翔からだった。

彼は口元に笑みを浮かべ、電話をかけ返した。

西園寺翔はすぐに出た。「仁さん、どうだった?」

「君の予想通りだ。」

「彼女、怯えてた?」

車の外で泣き顔で立ちすくむ美桜の姿を思い出し、心の奥に柔らかい感情が湧いた。

「うん、確かに怯えてた。かなり泣いてた。」

「やっぱり、彼女はもともと怖がりだから。」

西園寺翔の声にはどこか心配がにじんでいた。

工藤仁の目には皮肉が浮かぶ。

「いつ大阪に来るつもりだ?」

「もう少し待つよ。彼女が本当に怖がって、助けを求めてくるまで。」

「仁さん、部下には脅かすだけで、怪我させないように伝えてくれよ。」

「わかってる。」

電話を切り、数本煙草を吸ってから、美桜がいる本館へ向かった。

二階の客室はもう消灯していて、とても静かだった。

工藤仁はスタッフを呼び止めた。「さっき彼女は何か言ってた?」

スタッフは首を振った。「特に何も。ただ、また泣いて、やっと寝ついたみたいです。」

工藤仁はうなずき、さらに指示を出した。「明日の朝食は和食にして。彼女は和食が好きだから。」

「かしこまりました。」

工藤仁は階段を上り、客室の前にしばらく立っていた。

何かを思い出したのか、目元に柔らかな笑みが浮かんだ。

数分後、ようやく隣の主寝室へ向かった。

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