お年玉とギフトでつながる約束——都会の片隅で君ともう一度

お年玉とギフトでつながる約束——都会の片隅で君ともう一度

著者: 外村 慎二


第2話:ケチな子犬のギフト攻防戦

たった二千円ちょっとだけど、今日いちばん運が良かったのは僕だ! この国では千円札は日々の勝利だ。コーヒーとパンと、猫のカリカリ一袋。積み重ねたら、ちゃんと生活になる。

同僚から『社長は出張で半月帰ってこないから、その間に会社のことをしっかり覚えておいた方がいい』とアドバイスされた。オフィスの空気は軽口で和らぎ、でも言葉の芯は現実だった。

理由は単純、社長の要求が非常に厳しく、無能な社員を養うつもりがないからだ。僕は背筋を伸ばし直す。生き残りのためには、覚えるしかない。

僕は試用期間中の新入社員。正社員になれば、社会保険完備と家賃補助もついて月給は24万円。こんな良い仕事、絶対に手放したくない。東京で暮らすということは、数字と仲良くするということなのだ。

僕は真面目に勉強しつつ、グループチャットでギフトを取りまくった。努力と小遣い稼ぎの両立。僕の人生の美学は、いつもこの二本柱だった。

毎日ギフトを配る社長、嫌いな人がいるだろうか! そんな上司、都市伝説だと思っていた。なのに目の前にいる。僕は信仰心に近い敬愛を覚えた。

静まり返っていたグループチャットも、僕の登場で社長へのお世辞が飛び交うようになった。画面が活気づくと、業務連絡までスムーズになる。口は災いのもとであり、潤滑油でもある。

僕『社長最高! 毎日ギフト、愛してます!』勢いを落とさない。褒めの言葉は迷わず直球で投げるのが僕の流儀だ。

僕『毎日会社に来るのが待ちきれません、早く社長に会いたい!』出勤動機が完全に偏っていることは分かっている。でも正直だ。

僕『社長についていけるのは一生分の幸運です。もう路上でダンボールで寝る心配もありません、ありがとうございます!』少し大げさに。けれど東京の夜風を想像すれば、誇張とも言い切れない。

僕の毎日のお世辞が効いたのか、社長は毎日きっちりギフトを配ってくれるようになった。僕の通知音は小さな福のベルだ。鳴るたびに胸がふわっと軽くなる。

新しく仲良くなった同僚が言うには、社長は昔はブラック上司で、僕が来る前は毎日残業、手当は一銭も増えなかったという。空気は重く、笑いが少なかったらしい。

ギフト? 見たことも聞いたこともなかったそうだ! 社内の伝説は、たいてい恐ろしい方へ向かうものだ。なのに今は逆方向。僕は胸を張って、奇跡の一部であることを自負した。

僕がご機嫌でギフトを取っていると、リーダーがオフィスに飛び込んできた。ドアが開く音が鋭く響き、みんなの顔が一斉に上がる。

「みんな、急いで手元の書類を仕上げろ、すぐ会議だ!」声に焦りが混じっている。空気が固くなる。足音が増え、キーボードの音が早まる。

社長が帰ってきたのだ! オフィス全体の背筋がぴんと張る。僕も呼吸を整え、口角を引き上げ直した。

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